読売ウィークリー(2006年2月19日号)、特集「人口減社会 一万人の子をつくらぬ理由」の編集後記。
「子をつくる、つくらぬ思い」
漫画家のやくみつるさんは、「おのれの人生を全うしきる。それに専心する。子どもがいたら、それはできないな」と言ったそうです。
ロックのシーナさんは、「子どもによって社会を知った。家族がいなかったら、私には何もない」と言ったそうです。
おそらく、少子化が進むのは、やくさんのような“自分勝手な”人間が大勢出てきたから、というのが定説で、「子どもがいても自分の人生を全うしきれる」と反論する人々が多くいるでしょう。
でも、私は、シーナさんのような「家族至上主義」も少子化の加速に影響を与えていると思います。
社会を知る方法は多様だし、どう考えても「家族がいなかったら、私には何もない」ということはあり得ない。“シーナさんにとってのロック”さえ持てない凡庸な人々のなかには、シーナさんの発言を聞いてたぶん打ちひしがれる人もいるに違いありません。
家族や子どもに対する思いをこういう風に主張しあうことこそが少子化を加速させてはいませんか。テレビや新聞、雑誌にかかわる人はそれに気づいていないような気がします。