記事一覧

 このノートブックは、深見友紀子が原告となった裁判・最高裁パートナー婚解消訴訟の補足説明としてスタートしました。裁判の内容を知らないと理解しにくい文章があると思いますので、興味のある方は、下記サイトまでアクセスしてくださいますようお願いします。
http://www.partner-marriage.info/

 2009年以降のノートブックは、「ワーキング・ノートブック」に移転しました。

中途半端ならやらない方がまし

 5月13日
 昨日、12日ぶりに東京に戻りました。
 打ち合わせがあったので品川で下車し、山手線に乗り換えて渋谷へ。
 重いキャリーを引きずっている私は何回もこけそうになったり、車輪を人の足にひっかけそうになったり、散々。金曜日夕方のラッシュ時の山手線と渋谷界隈の人の多さは、京都のまったりムードに慣れた私には怖いぐらいです。

 打ち合わせが終わり、早稲田の自宅に戻って、留守中に届いた郵便物を整理していると、パートナーのSさんが戻ってきました。彼は16日ぶりの東京です。二人とも留守にしている間に、回覧板が2つも我が家で止まり、書留で送られてきたVISAカードの郵便局保管期限が切れていました。
 FAXもメールで受け取れるD-FAXにしている私たち。回覧板と郵便物だけはどうしようもありません。

 さて、友人の作曲家、野村誠さんしているNHK番組「あいのて」(4月スタート)の第2回が、視聴者からの苦情により放送が取りやめになったと、彼の5月10日のブログで知りました。早速、一昨日の大学院のゼミでもこの事件を取り上げました。
 
 彼の“新しそうな番組”を、“新しそうな男女関係”に置き換えてみました。
 私は“最高裁・パートナー婚解消訴訟”で負けましたが、価値観をひっくり返すには、もっともっと徹底しなければならないと思っています。
 中途半端ならやらない方がまし。世界は変わらないから・・。中途半端な別姓夫婦なんかがいるから、世界が変わらないのです。

http://d.hatena.ne.jp/makotonomura/
■あいのて放送くりあげ
 あいのての第2回の「テーブル」の放送が取りやめになり、第3回の「ピンポン」がくりあげで、今日から放送になりました。
 これは、「テーブル」に対して苦情が多かったことなどの理由があるようですが、この番組をつくっている一人の音楽家として、悔しいです。
 何が悔しいかと言えば、苦情を言った人たちを、音の魅力で魅了できなかったことが、一人のミュージシャンとして、本当に悔しいです。
 録音クオリティを上げたり、演奏の工夫で、テーブルを叩いて上に置いているものの響きの美しさや面白さを、視聴者にもっと明確に伝えることができたはずです。そこが、まだ不十分だったから、苦情が出たのだと思います。
 ぼくは、視聴者の価値観がひっくり返るような番組を作る覚悟で、この仕事に取り組んでいます。中途半端に新しそうな番組をやるつもりはありません。
 価値観がひっくり返るには、もっともっと徹底しなければいけない。何を徹底するか。それは、明確です。音へのこだわりです。もっともっと音にこだわること。
 中途半端なら、やらない方がましです。石を持ち歩き、今日も石の演奏を練習しています。本気の音を聴かせるのが、ぼくらの仕事です。
 どんなに頭のかたい人でも、魅了されるようなレベルまで、演奏と音のクオリティをあげるくらいのつもりでやらないと。


4月最後の日曜日

 5月1日
 昨日の未明、高校3年生のときの同級生(女性)が肺炎で亡くなったとのメールが回って来ました。
 ある男性が、お参りに行ったという女性からのメールを受け取り、その人が別の男性に転送し、その人がパートナーのSさんに転送し、そのメールが私に転送されてきたのです。
 亡くなった女性は旧姓が( )で併記されていましたが、お参りに行った女性の文章には現在の名前しか書かれていなかったので、朝になって、クラス幹事の女性からあらためてお知らせメールがあるまで、誰がお参りに行ったのかわかりませんでした。
 私たちより若い世代では、業績、仕事の一貫性の大切さが理解され、女性の職場での旧姓使用は当たり前になってきましたが、本当に大切なことは、業績、仕事の一貫性といったような、目で見て明らかなものではないはずです。
 「誰が誰だかわからないじゃない」という私に、「谷亮子は姓を変えてやっているよ」とSさん。状況の違う人たちを同じように考えてはダメではないの、と思いました。ごく平凡な女性の人生の一貫性が大切なのに、女性自身さえ気づいていないです。

 “大切なことは目に見えないんだよ”

 午後は、久しぶりに早稲田の私の家に娘がやってきて、2時間ぐらい話をしました。
 その後、私は友人が出演するダンスパフォーマンスに、娘は私の両親の家に。
 http://www.ableart.org/AAonstage/2005partner1.html
 
 18時に一旦自宅に戻ってきて、京都に出かける用意をし、19時過ぎに最寄りの早稲田駅に向かうと、地下鉄・東西線が人身事故のため不通。仕方がないので、そのあたりにいた若い女性3人とタクシーにあいのりしてJR高田馬場へ、新宿に出て中央線で東京駅へ。30分もロスしました。

 49歳の若さで肺炎で亡くなってしまう人。もっと若いのに自ら命を絶つ人。 複雑です。亡くなった同級生は、大阪府庁の幹部候補だったのに結婚退職して関東に移り住んだそうです。退職せずに勤めていたら、違う運命だったのかしら。不思議な気持ちになりました。
 
 GWは、4日に高校時代の友人とランチに行く以外予定を入れず、京都のマンションにこもって、たまった仕事を片付けることにします。
 「私って、一人でいるの大好き、意外とひきこもりだよ」と話していた娘。一見社交的で実はひきこもり・・・どうも遺伝みたいです。

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地下鉄早稲田駅で女性が飛び込み死亡、2万人に影響
 30日午後7時ごろ、東京都新宿区早稲田南町の東京メトロ東西線早稲田駅で、ホームに入ってきた東葉勝田台発中野行き快速電車(10両編成)に女性が飛び込んだ。
女性は全身を強く打ち、まもなく死亡。この事故で、同線は九段下―高田馬場間で約1時間30分にわたって上下線とも運転を見合わせ、約2万人に影響が出た。
警視庁牛込署は自殺とみて、女性の身元の確認を急いでいる。女性は20~30歳ぐらい。灰色のスエットの上下に白いカーディガンを羽織り、黒い靴を履いていた。(2006年5月1日0時16分 読売新聞)


intimacy-親密

 4月29日
 4月18日の早朝に私が東京の自宅を出てから(4月20日のノートブック参照)、私とパートナーのSさんはすでに10日間離れ離れ。今週末は私が東京、Sさんが京都だったのですが、昨晩、Sさんが京都に来るのを最大限早くして、私が東京に戻るのを最大限遅くして、京都駅で1時間ほど会いました。

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From: s*******-****@ezweb.ne.jp
Date: Fri, 28 Apr 2006 18:05:22 +0900
To: fukami-***@ezweb.ne.jp
Subject: Re:これから乗る

1837着
>私は2006発とった

 法律上赤の他人で、しかも共有財産もない私たち。でも、東京、京都それぞれの冷蔵庫に残してきた卵の数と賞味期限さえも伝え合う、親密な関係です。


AERAの、恐っ!

 4月26日
 先月からしばらくの間「AERA」を定期購読することにしました。大学の近くの書店から届けてもらっています。
 テーブルの上に置いてあった06年4月24日号を見て、学生が「恐っ!」と思わず声をあげました。他紙の表紙よりもドアップの顔が定番の「AERA」。表紙の数学者、藤原正彦さん(お茶の水女子大学教授)の顔写真が彼女にはどうも恐かったようです。彼女たちの「きゃーカワイイ☆」「ひぇーっ、恐っ\(>o<)/」をバカにしてはいけません。あたっている時が多いからです。

 記事を読みました。
 夫妻への取材ではなく、藤原正彦さん個人への取材なのに、“都内のスタジオには、夫人が最初に現れた。少し遅れてきた藤原正彦さんらに「どこ通ってきたの」。”で始まり、“夫人と顔を見合わせて、笑った。”で終わっています。
 『第二の性』そのものですね。こっちのほうがよっほど「恐っ!」です。

http://opendoors.asahi.com/data/detail/7343.shtml


京大生の“彼女“の大学というイメージ

 きょう、河合塾の研究員の方を迎えて、「入試結果及び全統模試データから見た京都女子大学の問題点と今後の課題」という職員向けのレクチャーがありました。
・06年度私立大系統別志願者数
・04年~06年 私立大主要大学志願者数
・関西3女子大及び東京3女子大の入試結果(前期日程)
・関西3女子大及び東京3女子大の志願者数推移(96年~05年、大学全体)
・京都女子大及び東京3女子大の志願者数推移(96年~05年、学部別)
・系統別 偏差値ランク比較(96年、01年、05年)

 資料は全部で21ページもありました。
 05年度の偏差値は・・・・・・
〔英文〕
 57.5~59.9  京都女子―文―英文 
          津田塾―学芸―英文
 55.0~57.4  東京女子―文理―英米文
 52.5~54.9  日本女子―文―英文
〔家政〕
 62.5~64.9  日本女子―家政―食物―管理栄養
 60.0~62.4  日本女子―家政―食物―食物学
 57.5~59.9  京都女子―家政―食物栄養
          京都女子―家政―児童
          日本女子―家政―児童
        
 京女の偏差値ってこんなに高かったんですね! 初めて知りました。
 関西3女子大とは、京女と同志社女子と武庫川女子だということも知りませんでした。(京女と同志社女子と神戸女学院ではなかったのかしらん。)

 偏差値が高くなりすぎると当然敬遠され、競争率の低下に結びつく。中途半端に高いままだと“関関同立”の滑り止め大学になってしまう。偏差値が低くなると大学全入時代を生き残れない―。難しいですね。

 「直接偏差値や競争率の上昇に結びつくとは限りませんが、大学としての特色あるプログラムを作るべきです。」と河合塾の研究員の方。
 プログラムも大事だけど私はイメージも大切だと思います。そろそろ京女は、京大生の“彼女“の大学という従来のイメージから脱却したらどうかな。
 京大生と京女生のカップルは今も昔もとても多い。(パートナーのSさんと、破局した奥さんも京大生と京女生のカップルでした。) しかし、京大生の“彼女”が京大卒の男の“妻”となり、安泰であり続けることはますます怪しくなるでしょう。どう転んでも大丈夫なほどの資産があれば話は別ですが、京大卒の男の稼ぎや将来性に賭けて専業主婦になるのは今後はバクチに近いです。
 小説家の山崎豊子さんは京都女子大卒。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%B4%8E%E8%B1%8A%E5%AD%90
 この偉業と比べると、京大に入ることなんてカンタンなことですよ。自分自身の社会的な力を積み上げていくために京大生を“彼”にする。そんなぐらいでちょうどいいことに気づいてほしいです。


ある人生相談に正解2人、不正解600人

 大日向雅美さんは自著「母性愛神話の罠」のなかでおもしろい例を挙げています。
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 【ある育児雑誌に読者から投稿された相談】
 「家事・育児の負担が私にかかるばかり。“離婚”も頭をよぎるこの頃です」
 
 私は32歳の公務員で、2歳の女児がいます。パートナーは同い年で出版社の編集者をしています。私たちは同じ大学の同級生どうし。結婚に際しては、お互いに仕事も家庭も両立できるように、助け合っていくことを約束して結婚生活をスタートしました。私にとってもパートナーにとっても、この約束はごく自然なことでしたし、家事分担も何の問題もなく順調に日々を送っていました。
 ところが子どもが生まれてから、この歯車が狂い始めてしまいました。というのも、育児や家事の大半が私の肩にかかってしまっています。もともと定時に帰宅しやすい私の仕事と違って、パートナーの仕事は不規則でしたが、最近では年齢的にも仕事に油が乗ってきたようで、連日帰宅が遅くなります。パートナーが育児や家事を分担できるのは、せいぜい休みの日ぐらい。子どもも私にばかりなついてしまっています。
 私も家事も育児もきらいではありません。しかし、これでは仕事も家庭も互いに分かち合っていこうといった約束はいったいどうなってしまったのでしょうか。これをパートナーに言っても、“今は自分のほうが仕事が忙しいのだから、時間の都合がつくほうが助けてくれてもいいのではないか? 二人が同じことをするのが必ずしも分かち合うことではない。できる人ができることをするのも、分かち合いではないのか?”と言って、いっこうに取り合う気配がありません。これでは何のために結婚したのかと疑問ですし、最近では「離婚」の文字が頭をかすめるようになっています。
 こうした私たちの様子をうすうす察知している私の母からも、別れることをそれとなくすすめられています。

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 大日向さんはこれまでに500~600人に、あなたが回答者ならこの人生相談にどのように答えるかを聞いたらしいです。
 どう答えるかは回答者の結婚観や家庭観、男女感の反映なので、本来ならば正解も不正解もないはずなのですが、2人を除き、すべて「不正解」だったらしい。
 なぜなら、「夫婦のうち、どちらが公務員でどちらが編集者なのですか」と尋ねたのはその2人だけで、後の600人近くは、この相談者、つまり公務員を女性=妻と決めつけて回答したからです。実際、相談者は男性でした。「正解」の2人も男性だったそうです。

 パートナーのSさんと私が親しくなって4年が経ちました。私は料理学校に2年間も通ったことがあり、実際に料理をすればかなりの腕前ですが、この4年間料理を作ったことはほとんどありません。2人でいるときは、よほどSさんの仕事が忙しいとき以外は、彼がご飯を作ります。朝ごはんはSさんが作り、できた頃私は起きます。私が1人でいるときは、外食か中食でしのいでいます。

・・・・何ていう女だってことになるでしょうね、たぶん。

しかし!!!!

 パートナーのY子と親しくなって4年が経ちました。僕は料理学校に2年間も通ったことがあるのですが、この4年間(仕事が忙しく)一度も料理を作ったことはありません。2人でいるときは、よほどY子の仕事が忙しいとき以外は、彼女がご飯を作ります。朝ごはんはY子がつくり、できた頃僕は起きます。僕が1人でいるときは、外食か中食でしのいでいます。

・・・これだったら、すんなりと受け入れられるはずですよね。

 一般の人々だけでなく、法律家たちも、大なり小なり、本人の気づかない間に男女の役割分担の固定観念にとらわれています。固定観念を取り払えば、「最高裁・パートナー婚解消訴訟」からもっと多くのことが読み解けるのに・・・・。


何百人、何千人の女性の無念

 あるインタビューで、猪口邦子さんが次のように言っています。
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Qその仕事に対する積極性、バイタリティーはどこから来るのですか?

Aそれは機会を得なかった女性を見ているからです。私の同級生で今も職業を維持しているのは私だけ。教員として教え始めた初期の女子学生は全員やめています。実に何百人、何千人の女性の無念を認識しているから私には一分も無駄にできないんですよ。
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 おそらく教員として教え始めた初期の「男子学生」は全員続けているんですよね。
 本人がやめたくないと思い、周りもやめるのは勿体ないと思ってもやめてしまった女性がいるのということは、反対に、やめてもいいというか、むしろやめたほうがいいのに、男であるというだけでやめない男性がいるということでしょ?
 
 最近、猪口さんは、エール大学での指導教官を泣き脅して博士号を取ったとか、若い頃は同じ分野の先輩である夫の力でのし上がったとか、たいした業績もない、単なる目立ちたがり屋・・などと週刊誌で散々言われているようですけど、明らかに妬みだと思います。
 客観的にみて、能力の低い人やコネでのし上がろうとする人は、絶対に男のほうが多い。

 私の知っている男性研究者には・・・
 10年で論文が5本以下でも教授に昇格した人が大勢います。 
 かつて、作曲した楽譜の画像(解説も無し)を紀要に載せて教授に昇格した人もいました。
 論文なんて1本も書いたことがないのではないかと思う男性も指導教官のコネで講師になっていますよ。
 かねてから「カバン持ち」がニックネームだったのに、博士号を取り、教授になったらカバンを持たなくなった人がいます。
 これらは“がせネタ”ではないです(笑) 。


息子は破滅的なアーティストになるらしい!

 2005年11月12日のノートブックで紹介したベルリン在住の友人、音楽家&西洋占星術師の小瀬泉さんが一時帰国し、一昨日我が家にやって来ました。

 永住権を取得するために、月100ユーロで結婚契約をしてくれる人を探しているらしいのだけど、未だ現れず。3年間結婚していれば、たとえ離婚しても永住権があり。ベルリンでは同性でもいいらしい。おもしろいなぁ。
 私も富山大学で教えていたころ、全日空勤務の人と法律婚したら、飛行機代がタダになるかな、と考えたことがあったけど・・。

 「法律婚のメリットって、そんなことだけ!」ということで、意見が一致。でも、彼女は「一度も子どもを欲しいと思ったことはない」らしいけれど、私は欲しかったので、この点は違うなぁ。
  
 昨年の夏、京都の旅宿、胡乱座で会ったときのサジェスチョン、「2006年11月までは著書や論文を書き続けたほうがいい」。私は忠実に実行中です。
 その時に彼女が言ったことのなかで「2005年10月に遺産が入る」というのがあって、それはあり得ないと思ったのですが、10月に父の会社を解散するに際して、私の借金がチャラになりました。

 今回は以前から聞いている娘のことだけではなく、生まれてから一度も会ったことがない息子のことも聞きました。
 「鬱的で破滅的な、美術系アーティスト」になる。 おもしろそう!!! 
 産んでよかったと思いました。

 娘は、最高裁・パートナー婚解消訴訟の裁判相手の母と一緒に暮しています。
 息子は、裁判相手とその妻と住んでいます。
 判決直後、断片的な新聞記事に基づいて、「心優しい新しいお母さんのもとで、息子さんは幸せになるでしょう」と楽観的に語った人々がいましたが、人生とはもう少し生き生きとしたものだと思いますよ。

 http://www.partner-marriage.info/hannou1-2ch.html

 「○歳になるまで息子は父親に抑圧される」 
 息子が○歳になって解き放たれるとき、父親に何が起こるのか。その頃、小瀬さんは「細木数子」を超えているかもしれません。


何か今できることをしたい、と言ってはダメなのか

 「女性研究者支援」という単語でブログ検索して、東北大学教授の大隅典子さんという方のブログ「大隅典子の仙台通信」をみつけました。
 医学者であり、男女共同参画などに関する委員もしている大隅さんは、2005年12月19日のブログで次のように書いています。
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 私はやっぱり「ジェンダー」という言葉が胡散臭くて嫌いである。「フェミニズム」も大嫌いである。
 ただし、もし、家庭と仕事の両立や、子育てや介護で大きな負担を強いられ、そのためにキャリアを諦めるような女性が、現実に、多数いるのであれば、その人達のために何か今できることをしたいと、心から思う。
 あるいは、「女の子だからエンジニアになるのは無理かなあ?」と思う中学生に、「なりたいものになっていいんだよ」と背中を押してあげたいと思う。
 それはすでに一山超えることができた人間としての務めだと考える。
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 これに対して、次のような書き込みがありました。
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 「何かできることということ事態他人事であって、真に男女共同参画を考えていられなかったことが伺われます。大隅先生のこれまでの境遇を考えるとあたりまえなのでしょうが。たくさんの役員を引き受けられてたいへんだと思いますが、頑張ってください。」
 「(上記の)コメントに、正直、唖然としてしまいました・・・現実に「多数」いるからこそ、やっと、ジェンダー問題として、皆が考えなくてはいけないと、表面化してきたと私は認識しています。自分のキャリアのためには、子供を早く産みすぎたと、私は思っていますし、男社会の壁は、まだまだ厚く、自分の生き方を悩む日々です。」
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 大隅さんのコメントに解説を加える人も出てきました。
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 「ただし、もし、家庭と仕事の両立や、子育てや介護で大きな負担を強いられ、そのためにキャリアを諦めるような女性が、現実に、多数いるのであれば、(勿論私はそう考えている。だからこそ)その人達のために何か今できることを(責任ある研究の傍ら、今の状況ではこのようなかたちで男女共同参画に携わることしかできないけど、精一杯努力)したいと、心から思う。」と受けとめました。
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 こんな状況では、怖くて何も書けないなぁ。読んでいて私は“心から”そう思いました。

 「女性のジェンダーに背いている」存在だとは思っていません、と理科系の大隅さんは書いています。医科系の大学を中退して音楽に道を変えた私も、自分自身を「女性のジェンダーに忠実な」存在であるとは思っていませんよ。(音楽の世界では女の作曲家が少ないことが当面のジェンダー問題とされています。)

 「女性研究者」もさまざまです。
 私たち音楽教育家のなかでは、これまでポスドク(博士号は取得したが,正規の研究職または教育職についていない者)は存在しませんでした。最近東京芸大を中心に博士課程の学生を多くとるので、これからは出てくると思いますが・・。つまり修士号だけで正規の研究職または教育職に就けたのです。

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 WEDGE(2006年1月号)に早稲田大学教授の長谷川眞理子さんが次のように書いています。
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 「大工として、男女を問わず能力があれば採用する」としても、伝統的に「女は大工に向いていない」という考えで教育し続けていれば、大工になりたい女性がいても、途中でその望みはつぶされるかもしれない。それを跳ね返して望みを達成しても、不利に扱われるかもしれない。集団全体として見たときに、大工になりたい女性や、向いている女性は少ない、ということが実際にあるとしても、それはどうでもよいのである。『たった一人』でも大工になりたいと思い、それに向いている女性がいたときに、「女性であるから」という理由で彼女が不利になるのは、一種の人権侵害だということだ。子育てをどうするのか、家族はどうなるのか、などといった問題は、まず人権をどう考えるかを決めてからの問題である。
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 子育てや家族と、個々人の人権と自由とを両立させることは、“生物学での大発見”よりも、“超人的な演奏”よりも困難なのかもしれません。
 大隅さんほどではないにしても、すでに“丘”ぐらいは超えた私も、『たった一人』のために応援していく務めがあると思っています。

「大隅典子の仙台通信」の2005年12月19日のブログ
http://nosumi.exblog.jp/2396506


女性研究者支援モデル育成

 文部科学省が1月1日付読売新聞朝刊、「幼稚園が義務教育に」のニュースを5日付で否定した。私が所属する児童学科にとっては重大な問題なのに、私は11日の教授会で学部長が話すまで知らなかった。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/01/06010501.htm

 13日の「少子化対策で出産無料化」も安倍長官らが即座に否定したらしい。
 どうしてこんなに勇み足になるのだろう。

 こうしたニュースと比べると、恩恵にあずかる人も関心のある人も少ないためにあまり注目されないが、昨年末、12月27日に興味深い施策が出た。「女性研究者支援モデル育成」がそれだ。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/12/05122702/008.pdf

 1研究機関、2000~5000万円。私がいる発達教育学部(短期大学部を含む)に関しては、すでに女性教員の割合が50名中14名、28%(それぞれの人が、ピアニスト、声楽家、カウンセラー、児童文学者、民族音楽学者、家族社会学者などなど、えらく“濃い~”ので実際はもっと多いように感じる)。政府の目標値に達していることもあって、女性研究者の冷遇よりも若い事務職員が非正規雇用者であることのほうがずっと気になる。
 大学という組織は研究者だけで成り立っているのではないのだから!