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 このノートブックは、深見友紀子が原告となった裁判・最高裁パートナー婚解消訴訟の補足説明としてスタートしました。裁判の内容を知らないと理解しにくい文章があると思いますので、興味のある方は、下記サイトまでアクセスしてくださいますようお願いします。
http://www.partner-marriage.info/

 2009年以降のノートブックは、「ワーキング・ノートブック」に移転しました。

居心地のよい家庭の危険度

 何か事件が起こると決まって「親子関係が悪い」という人たちや、家族崇拝主義者たちばかりではなく、幸せな家庭環境が何よりも大切と感じている人たちも読むといいのではないかと思う文章を紹介しましょう。

 丸山健二 『生きるなんて』(第2章 時間なんて)

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 将来につながる、現実的な目的を持ち、それに向かって邁進している者は、たとえ雇われの身であっても、残業と早出の日々を余儀なくされる厳しい環境のなかにしたとしても、その多忙な時間は百パーセント彼のものなのです。
 時間をわが物にするということはしっかりとした目的を持つことであり、その目的に向かって突き進むということは自立へ迫るということです。
 その目的ですが、残念なことに、居心地のよい家庭環境からは生まれにくいのです。家族愛に満ちあふれた、裕福な家庭に生まれた者は、その状況を最高のものと受け止め、それ以外のものを捜さなくなります。現状維持が最大の目的になってしまいます。
 しかし、現状維持を目的とは呼べません。なぜなら、そこに流れているのは家族全員のための時間であって、あなた個人の時間ではないからです。集団で共有する時間は、あなたの時間でないばかりか、あなたの自立を妨げる危険性を孕んでいます。
 家庭や家族を絶対視することは、国家に対する過剰な思い入れと同様、あなたをあなたでなくしてしまいます。そもそも家庭や家族は崩壊するのが当たり前で、それが健全な形なのです。けっして悲劇ではありません。崩壊しない家庭や家族のほうがむしろ悲惨と言えるでしょう。
 よくまとまった、絵に描いたような幸福な家族という幻想に振り回されるのは禁物です。そこにはとんでもない落とし穴が隠されているのです。崩壊を恐れるあまり、少しでもその状態を長引かせようとするあまり、理想の形が保てなくなったときにパニックに陥り、これまで家中に充満していた愛が、突如として憎悪に変わります。

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 最高裁は、私と裁判相手との関係を「一方的に解消してもいい関係」と判断しましたが、“崩壊させたくてもできず、同じ屋根の下で憎悪を増幅させているような関係”よりはずっとハッピーだったのかもしれません。私が裁判に負けたのは、私に個人の時間があり、自立していたからだったりして!
 そして、私が今、仕事上の現実的な目的を持ち、それに向かって邁進できずにさ迷っているのは、パートナーSさんとの関係が居心地がいいからかもしれません。


東京―京都、すれ違いの日々

 12月14日の夜、パートナーのSさんが京都に来た。先週末、互いの仕事の都合で私は京都、Sさんは東京だったから、私が5日の夜に東京の自宅を出て京都に来てから、9日ぶりの再会だ。

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Date: Wed, 14 Dec 2005 21:19:48 +0900

今のぞみ乗った
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 「一週間以上も会っていないわ」と話すと、私の同僚で声楽家のMさんは、「仕事がはかどっていいじゃない!ずっと一緒にいると、ちょっと黙ってほしい、って思うこと、よくある」と言った。彼女はドイツ人の音楽家とこの5月に結婚したばかり。日本に来たばかりの彼にはまだあまり仕事がなく、現在の主たる稼ぎ手はMさんである。
 音楽学担当のKさんは、同じく大学教授だったダンナさんがこの春早期退職して、1人で沖縄に移住してしまった。

 ここでは世間とは少し違う風が吹いている。
 

 先月友人にもらって研究室の机に飾ってあったボジョレー・ヌーボーを、Sさんと2人で飲んだ。体が暖まった。

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 一人で眠るときは電気毛布が欠かせないのに、2人で眠ると暖かい。省エネ!

 一緒にいれたのも束の間、昨日16日午後私は東京へ戻ってきた。音楽之友社での打ち合わせ、立教女学院短大でのシンポジウム、東京芸大での共同研究会、それから二週間ぶりのレッスン。Sさんはそのまま京都にいるし、まだ大学の仕事もたくさん残っているので、また18日の夜、私は京都に向かう予定だ。

 人はこういう生活を「すれ違い」であるとし、「中年の恋人同士というだけじゃないですか。共同生活とか、協力関係ではないですよ」と言う。

 こういう生活、互いの仕事にも愛情にも緩急が付いていいのだけどなぁ・・。

 昨年は「東京に戻る」「京都に行く」「京都に来た」と言っていたのに、最近、京都にいることが時間的に長くなり、「東京に戻る」「京都に戻る」と言っていることに気づいた。

 お正月はどっちにいようかな。
 風情を優先するのなら京都。
 冬のセールを優先するのなら東京!