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 このノートブックは、深見友紀子が原告となった裁判・最高裁パートナー婚解消訴訟の補足説明としてスタートしました。裁判の内容を知らないと理解しにくい文章があると思いますので、興味のある方は、下記サイトまでアクセスしてくださいますようお願いします。
http://www.partner-marriage.info/

 2009年以降のノートブックは、「ワーキング・ノートブック」に移転しました。

東大教授と非常勤講師は紙一重

 11月17日のノートブックで、「夫婦別姓」について上野千鶴子さんと小倉千加子さんは“あほくさ~”と言っていることを書きましたが、同じ本 (「ザ・フェミニズム」) のなかで、上野さんは次のように言っています。

 「教師をやっているのは、私のなりわいなんです。おまんまの種です。資産で食えず、夫の収入で食えない私は、自分の労働で食うしかないんです。そもそも人に頭を下げるのがいやで、朝起きるのが嫌だった。ないない尽くしで、気がついたら、目の前に大学教師の道しか残っていなかった。その大学教師の道も、もしかしたら紙一重の差で、今でも相変わらず非常勤暮らしを続けていたかもしれない。今でも非常勤暮らしを続けている同世代の研究者はたくさんいらっしゃいます。彼女たちと私を分かつ違いは紙一重です。」

 29歳で大学を出てヤマハ音楽教室の先生になった私は、2年目に入ったある日、このままでは同じことの繰り返しだとフト思いました。2年目の秋、音楽教室には内緒で東京芸大の大学院を受け、合格。前例がないと言われて一度はクビになりかかりましたが、3年目は大学院生とヤマハ音楽教室の先生をやり、後半はさらに妊婦でした。
 37歳のときにたまたまバスのなかでヤマハの元専務に会ったのが転機になりました。その人が私をある国立大学の教授を紹介してくれて、翌年その教授が私を富山大学の助教授に推薦してくれたのです。
 私のように前職がヤマハ音楽教室の先生で、常勤の大学教師になれた人を私は知りません。まず、大学院に進まなければ、大学教師にはなれていなかったと思います。そして、2つのラッキーがあります。1つはバスのなかでヤマハの元専務に会ったこと。
 私は第二子である双子を出産した後、髪の毛がとても抜けるので聖母病院(新宿区落合)に光線治療に通っていました。治療のあと、新宿に買い物を行こうとしてそのバスに乗りました。産後だから髪が抜けるのは仕方がないと諦めていたなら、バスに乗っていなかったかもしれません。
 もう1つのラッキーは、その大学教授が「僕が知っているなかで、最も将来を期待できる女性です。子どもが2人いますが、東京で夫と義母が子どもの面倒をみますので、世間的な心配はご無用」と推薦文のなかで書いてくれたことです。赴任地に妻子を連れて行く男性研究者に対して、子持ちの単身赴任の女性研究者では弱いと思ったのでしょう。

 大学というところはまだまだ非競争社会です。能力の低い男の教授に限って自分の立場を脅かさないイエスマン(たいていは男です)を呼んでくるという“負の連鎖”があります。富山大学助教授になっていなければ、今の京都女子大教授もなかったと思うと、私は運がよかったです。上野千鶴子さんのような東大教授でさえも、「もしかしたら紙一重の差で・・・」と思っているのですから!


電車のなかでの化粧ってどこまで悪い

 女が車中で化粧することを批判する人が多くいます。その多くが男性です。

 時間が惜しいとき、私はマスカラをつけずに河原町のマンションを出て、大学に向かうバスの中でマスカラを塗ることがほとんどです。京都の市バスは運転が荒いですから、アイラインは無理! 
 月曜日の朝、東京から京都に向かうときはスッピンで家を出ます。起床から家を出るまで15分。名古屋までは仕事をして、名古屋を出ると化粧を始め、指輪とピアスをつけて、トイレに行き、ついでにゴミを捨てた頃、京都駅手前のトンネルにさしかかる・・・これがいつものパターンです。夜の移動のときは、トンネルを抜けるまでパソコンに夢中になり、京都で降りそこないそうになったこともあります。

 私の友人には、信号停止の間を利用して、車のなかで化粧を全部やってしまうという人もいます。その人は大学助教授と演奏家を両立させているので、新幹線のトイレで“大学の先生のスーツ”から“アーチストの普段着”に着替えるそうです。一度、タクシーの中でも着替えたらしく、乗せたときの服と違っていたので、運転手が幽霊だと思ったという伝説的な話もあり!

 「本来は自分の家や部屋の中など他人の目に触れない場所で行なうべきことを公衆の面前で行なうことは、それを目にする者を大変不快な気持ちにさせる迷惑行為である」ということらしいですが、粉が飛ぶ、匂いがする、キレイになっていく姿を見たくない、西洋人は人前では化粧をしない、日本人の恥だ・・どれも説得力がイマイチ。
 
 山手線や地下鉄の中でご飯を食べるのはダメでも新幹線でダメという人はいないでしょう。ただ単に乗っている時間が長いから、という理由なのでしょうか。
 匂いがする―名古屋味噌カツ弁当のほうが、よっぽど匂います。
 粉が飛ぶ―白いワンピースを着ているときの、隣に座る男性の新聞紙のインクも迷惑です。
 西洋人は人前では化粧をしないかもしれないけど、香水の濃度は半端じゃないですよ。以前私の家を訪ねてきたヨーロッパ人女性の香水が強くて、1日経っても残り香がありました。人前での化粧と濃い香水、どちらがより迷惑なのか、微妙ですよね。

 3年ほど前、ブラジャーの“透明付け替えヒモ”が流行りましたが、今年の夏、ブラジャーのヒモを見せるのは平気になったみたいです。イタリアに行ったとき、腹部を見せていない女の子のほうがずっと少数でした。トランクスをズボンから上に出し見せている男の子も多かったです。おっさんたちが「電車のなかでの化粧」をネタにギャルいじめをしている間にも、“公序良俗”の基準は大きく変化しているのでは?
 
 バスの中で化粧をしてキレイになっていく女に対して、「アンタはん、短い間にエライ、キレイになりはりましたなぁ~」と言える男性がもっといてもええのと違いますか。

 文化の差なのかな?