“ちょっとした風邪”がきっかけで、26日土曜日の夜から声が出なくなった。
体はしんどくないので、発話をしようとして初めて自分が病人だということに気づく。
アナウンサーなど声を使う仕事だったら致命的だが、こんな声でピアノのレッスンをしたり、私語の多いマンモス授業をするのだってつらい。
“ちょっとした風邪”をひいたのは、23日の祭日。京都は晩秋の紅葉目当ての観光客で賑わっていた。
夕方、四条東洞院の着物屋さんに行って、草履を買った。この日は職人さんが来ていて、その場で私の足に合うように鼻緒を調整してくれた。
百貨店などではあり得ないサービスだし、今吟味して買うと一生使える。
その後、河原町三条の楽器店に娘のギターアンプとエフェクターを買いに行った。娘が東京の楽器店で調べた値段より少し安かったので、取っておいてもらったのだ。
「配送料は?」「サービスします」
ラッキー!!!
幼い頃の洋服などは一年で切れなくなってしまうから、おもちゃもすぐに飽きるから勿体ないと思ったが、今出会うものはひょっとしたら人生を変えるかもしれない。
それから、四条河原町のジュンク堂書店に行って、ジェンダーや社会学関連の本を数冊買った。
東京のジュンク堂書店ではダメだが、この店だけ、カウンターで京都女子大の身分証明書を見せると、持ち帰れるうえに、請求は大学に行く(もちろん私の個人研究費のうちの新聞雑誌代の範囲内だが)。斬新なタイトルに惹かれて買ってはみたものの、つまらない本だったというような失敗はない。
そして自宅に戻ると“ちょっとした風邪”をひいていることに気づいた。
大きなマスクをしている私に「深見先生、風邪をひいたの?」とみんな声をかけてくれるのだが、答えるのもつらい。風邪をひいたのが他人にわかるぐらいひどくなったのは4年ぶりぐらいだ。隣の研究室の声楽家、松本奈美さんから、声が出るためのいろいろな療法を聞いた。
「私は本番前に、喉に(首に)注射をしたこともあるわよ」「それで、歌えたの?」「副作用で熱が出るのだけど、ある一定時間、いつものように声は出たわ」
闘っているのは、高橋尚子や越路吹雪や杉村春子だけではない。