8/13一部修正
「子育て世代の意識と生活」と題する2005年版国民生活白書が出た。
いつもの通り、ありきたりの提言が書いてある。
(1)所得格差を固定化させないような雇用体系の構築
(2)安価で多様な子育て支援サービスの拡充
(3)民間非営利団体(NPO)を中心にした地域による子育て支援体制の整備
現在の保育関連の雇用環境を見ていると、“安価で多様な子育て支援サービス”、“民間非営利団体(NPO)を中心にした地域による子育て支援”の拡充は、非正規労働の女性を増やすだけだと思う。そうしたサービスを提供するのは、おそらく結婚前のパート女性、パート・アルバイト同士の夫婦の妻、正社員を夫に持つパート妻がほとんどだろうから。
(2)(3)と(1)は少なくとも女性に関しては絶対に両立しない。
また、子供1人の養育費(計22年間)は約1300万円とあるが、森永卓郎さんの著書『〈非婚〉のすすめ』(講談社現代新書)の中に次のような記述がある。
・私立幼稚園、公立小中学校、公立高校、私立文系大学に進学した場合の総教育費は1447万円。これには学校教育費、補習教育費、習い事、小遣い、交通費、サークル等の参加費といった広義の教育費だけが対象となっている。(三和銀行の「子供の教育費に関する調査」(96年4月))
・これらに食費等の生活費が加えられ、約2000万。(93年「厚生白書」)
・出産・育児費用や衣料費、理美容費、パーソナル所有品代にまで広げると、総コストは2933万。(AIUの現代子育て経済考(93年))
・これでも推計から漏れているコストは、家賃と結婚費用である。子供部屋を6畳一間としても22年間のその家賃は760万、結婚費用のうち親からの援助と結納金の合計は384万、一人分としてその半額の192万。これらを合わせると3885万。
・さらに、子育てにかかる人件費コストがある。子供一人あたり投入している時間を計算し、その時間に年齢別の時間当たり賃金を乗じて人件費コストを算出すると、3996万。直接経費に人件費コストを加えた総コストは、7881万。
これらの統計は10年前のものだし、どの程度の信憑性をもつかわからないけれど、1300万円ではないのは明らかである。
こんなにお金がかかったうえに、多くの女性が出産・子育てで定職を失い、母性が大切だとか、三歳児神話だとか言われ、不良になれば育て方が悪いと言われたんじゃ、たまったものじゃない。日本の女性たちはまだまだおとなしいのか。何の根拠もなくどうにかなると思っているのか。楽観も度を越すとただの無知だと思う。
子育てにかかる費用の統計結果を見て多くの人が呆然とするに違いない。でも、京都のお嬢様大学に勤務する傍ら、東京の富裕層の子どもたちにピアノを教えている私は、富裕層の教育費と生活費は上記の算出額では留まらないと思う。もっともっと多いはず。他人の芝生は青いのかな。彼らは子育てを楽しんでいるし、心にも余裕があるように見える。所得格差、資産格差は広がる一方だ。
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子育て負担の軽減を=費用、時間とも余裕なく-05年版国民生活白書
竹中平蔵経済財政担当相は12日の閣議に、「子育て世代の意識と生活」と題する2005年版国民生活白書を提出した。少子化の背景として、結婚や子育てへの心理的・経済的な負担感が高まっていることを指摘。子育て世代の負担を軽減するには、雇用の多様化や子育て支援サービスの拡充など総合的な対策が必要だと訴えている。
結婚や子育ては01年版白書(家族の暮らしと構造改革)でも取り上げられたテーマ。05年版は、将来結婚する若者から大学生の子を持つ親の世代に当たる20代から40代を「子育て世代」と定義し、結婚や子育ての回避・先送りの背景にある「負担感」の実態分析を試みた。
国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査など複数の意識調査を用い、子育てに消極的な最大の理由は「経済的負担の重さ」と分析。総務省の家計調査を基に内閣府が独自に算出したところ、子供1人の養育費(計22年間)は約1300万円に上った。
しかし、若年層ではパート・アルバイト同士の夫婦が増加。共働きでも世帯年収が240万円程度しかなく、所得面では明らかに子供を養う余裕がない。所得に余裕のある正社員の共働き夫婦でも、長時間労働の常態化による「時間貧乏」を理由に、子育ての困難な状態が進んでいる可能性が示された。
このため白書は、少子化対策として(1)所得格差を固定化させないような雇用体系の構築(2)安価で多様な子育て支援サービスの拡充(3)民間非営利団体(NPO)を中心にした地域による子育て支援体制の整備-などを進めるよう提言している。(了)
(時事通信) - 8月12日11時1分更新