7月の下旬から京都女子大の児童学科2年生、3年生約250名の実習先保育園を教員11名で分担して廻っている。
連日の猛暑のなか、かなりの重労働である。
7月29日 兵庫・淡路島1園、8月1日 奈良3園、8月2日 京都1、大阪1園、8月3日 奈良1園、8月6日 京都1園、8月8日 兵庫2園、8月9日 愛媛1園
教官が学生の実習先を訪問することを巡回指導という。だが実際は挨拶回りに等しい。前任校では小学校・中学校担当だったが、ほとんどやったことがなかった仕事だ。
公立園の園長は、たいてい働くことに対する意識の高い年輩の女性たちだ。だが、保育士のなかにはパートの人も多い。正規職員とパートとの待遇の格差の問題が、企業と同じように存在している。
私立では出産したら解雇というところはまだとても多いし、短いサイクルで次々若い人に来てほしいので美人しか採用しないという噂の園もある。「美人のほうが早く結婚するからという理由みたいですよ」と学生が言っていた。結構笑える。
一昨日訪ねた保育園の男性副園長は、「うちは4大卒は採る予定はないです。短大卒より多く給料を払わなければなりませんし。同い年で2年余分に大学にいたのと、2年実務経験があるのとでは大違いですし」
2年余分か!
ムダかなと思ったが、「出産しても続けられますか」と聞いてみた。
「やめてもらわないと困ります。一年多くいるとそれだけ給料を多く払わなければならないですし。正規職員で年配の保育士を雇う余裕があるのは赤字でもなんとかなる公立だけです」
「熱があると電話をして迎えにきてもらっています。お母さんは子どものために働いているですから。迎えにくるのはおばあさんでもお姉さんでもいいのですけど」
子どものために働く、か。自分のために働くというのではアカンのかな。
この男性が特別男尊女卑というわけではない。大抵の男性の「女性の労働観」はこんなものだろう。
私立は経営を第一に考える。それも仕方がない。以前私が勤めていた旧国立大学の富山大学では、一学年学部学生183名に対して常勤教員数89名だった。京都女子大の児童学科は、一学年学部学生130名に対して常勤教員数11名である。独法化後、旧国立がそんなに多くの教員を抱えていてやっていけるわけはない、と多くの人が言う。
築4年のきれいな建物のこの保育園には若い男性の保育士がいた。
「彼は正規職員なんですか」
「今年アルバイトで採用した人です。様子をみて正規職員にするかどうかを決めようと思っています。男性の場合は、30才までに主任になれなければ、自然にやめていきます。」
かつては女だけの職場だったのに、ここにもすでに‘新たな’男性優位がある。
次に訪ねた保育園は公立で建物も古くて、ほとんどの部屋に冷房もなかった。
「最近ほとんど採っていなかったのですが、今年は町で2名、保育士・幼稚園教諭を正規採用する予定です」
「4大でいいのですか」
「4大が不利ということはまったくありません。町の職員も国公立大の人がほとんどですし」
公立園でも次第にパートしかとらなくなっている昨今、正規職員は狭き門だ。
この二つの園を比べたら、若い女性は前者のきれいな保育園のほうがいいと思うのではないかな。でも、絶対に気づいてほしい。公務員には着服などの不祥事が続いているし、公務員だって今後どうなるかわからないけれど、社会が不透明になり、雇用が増えるといってもパートばかりが増えるなかで、まず若い女性たちにはとにかく正規の職員を目指して欲しい。そして、いったん手に入れたそのポジションを簡単には手放さないこと!!
私が若い頃、こんなことを考えたこともなかった。教えてくれる人もいなかった。
教員免許さえ取る気がない学生たちに対して、「君たちは演奏や絵で食べていきたいと思っているようだが、君たちが出世して東京芸大の教授になるときに教員免許を持っていることが有利になる。附属高校があるから、そこでも教えられる人を優先する」とか教務課長が言って、手を変え品を変え免許取得を薦めていた。それでも当時免許を取得した芸大生は3分の1ほどだったように記憶している。みんなどこか手堅い道なんてバカにしていた。
保育園に少しいるだけで、保育園で働く保育士の女性、保育園に子どもを預ける女性の実情がみえてくる。近い将来、非正規労働者の女性が子どもを保育園に預けて働き、非正規労働者の女性保育士がその子どもの世話をするという図になるのではないかと思う。これが政府や一部の識者が進める男女共同参画の姿なのだろうか。
今年京都市は20名の保育士を採用する。近年にない大量募集である。チャンス!